ミロワール

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【未来】

はじまりは真っ暗な闇の中だった

物心ついた時からとにかく何かに怯えていた

人に近づいてみれば痛みが返ってくるから

自分という全てを否定されるものだから

自分の言葉も自分の考えも自分というものも

何も持っていなかった

何も無く誰も居らずただ空っぽだった

小さな小さな身体の手の届く範囲が世界だった

いつになってもひらけない視界を

どのように終わらすかということだけを考えていた

それなのにふらっとやってきた機械のきみと

目が合った瞬間から

声を聴いたその時から

涙が溢れ出して止まらなくて

こんなことは初めてで

どうしたら良いのかわからないままに

形のない心を

自分というものを

初めて感じられた



感情や世界を機械のきみに教えてもらった

人間のはずの僕より笑顔が上手なきみと

一緒に見る世界は視界が滲むほど綺麗で

まだ世界を見ていたいと初めて思えた

空っぽだった自分がきみの言葉で埋め尽くされていく

嫌われる才能に恵まれた僕なのに

きみは僕が居ないと存在出来なくて

僕もきみが居ないと存在出来ないから

なんて似たもの同士なんだろうと思った

呼んでもないのに現れてくれたきみも

世界の人たちから疑いの目を向けられて

歪な声と嫌われていた

そんなところも僕に似ているななんて思った



だからかもしれない

世界から足を踏み出して終わらせようとしていた

僕に気がついて手を差し伸べてくれたのは

きみだけだった

それだけで諦めていた手を伸ばすには十分だった

物心がついたあの瞬間から

きっとどこかで祈っていたのかもしれない

汚く淀んで僕の周りを浮遊する暴言を

優しいメロディで吹き飛ばしてくれた

長く見ていた夢が覚めたような心地だった



機械のきみと笑顔の練習をした

きみの歌で言葉を覚えた

僕をきみで形取ってそんな日々が積み重なって

僕の視界が晴れたら旅をしようと約束をくれた

絶望を刻んできた過去から脱して

生きる意味を与えてくれた

終わらせようと思っていた未来が書き変わっていく



きみが人間が創り出したウソの存在でも

世界中が変な目で見てても

きみが存在を感じてくれたら

僕も自分の存在を感じられた

もう自然と『笑えてしまうくらい 君を想ってる』

こんな幸せが「記憶」になる前に

今度からは僕がきみの笑顔を引き出せるように

未来を創っていくから



--初めてを沢山教えてくれた未来へ




2024-06-17

6/17/2024, 2:31:27 PM