「キミは、まるで鳥の様だね。」
真夏のよく晴れた、溶けるように暑い日だった。
友人である彼と、夏休みを利用して二人きりで、プールに泳ぎに来ていた。
私の胸には、二人きりで。と、誘って了承が取れた喜びと好きな人と二人きり、なんて現実に緊張しきっていた。
私があまり彼を意識をしない様に泳いでいると、
彼がプールサイドに座って、水滴を拭いながらそんな一言を呟いた。
〔ん?どういう事?〕
私は、ある程度泳いで戻ってきた時に掛けられた、唐突なその一言に戸惑っていた。
「いやさ。プールの水底が綺麗な水色でさ、空みたいだなって思ってね。しかも、今日めちゃくちゃに晴れてるじゃん。雲一つ無いしさ。
そうしたら、なおさらプールが空みたいに感じてきたんだよね。
そんな事考えていたら、自由に泳いでるキミが鳥が羽ばたいてる様に見えたんだ。」
彼は恥ずかしがる様子も無く、つらつらと理由を述べた。
私は顔に熱が集まる感覚がして、
〔泳いでるんだから、鳥は鳥でもペンギンじゃん。
空飛べないよ?〕
小馬鹿にするように、そんな風に言ってしまった。
私がそんな言い方することもなかったじゃん。と、
俯き自分を責めていると、
彼が、
「良いじゃん、ペンギンでも。空が飛べなくったって、
僕は好きだよ。」
ニコニコとしながら言って、プールに入り泳ぎ始めた。
彼をパッと見れば、スルスルと泳いでいる。
〔顔あっつい。何であんなに優しいのかな。
酷い言い方しちゃったのに。〕
期待してもいいのかな。
ペンギンみたいに、少しずつ、一緒に進みたい。
そんな思いを胸に抱え、私も彼に続く様に
泳ぎだした。
8/21/2023, 11:10:00 AM