真空

Open App

I LOVE

フワフワとした頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めた
たまらない
もうこの子のためならば死んだってかまわない
いやでも死んだらこの子の傍にいられなくなる
それはダメだ
考えことをしていたせいで手が少し止まっていたようだ
咎めるように上目遣いでこちらをみてくる
世界で一番愛おしい
本当に

「可愛いなあ」

デレデレと顔を緩ませ膝の上にいる子猫を撫でている師匠をみる
修行のときどころか日常生活でも滅多に笑わないのにあの子に対しては微笑みどころではなく顔面全てを緩ませて威厳も何もあったものではない
先ほどまで弟子をボコボコにシバいていたとは思えない手付きで優しく頭を撫でている
愛おしいと全身で表現している
(いいなぁ)
師匠はいつだって自分には厳しい
でもそれは嫌いだからとかではないということは知っている
だから別に修行が嫌な訳ではない
でもあんな風に惜しみ無く愛を注がれている姿は猫といえど羨ましい
頭を撫でてもらったことなんて記憶には一度もない
いや猫みたいに撫でて欲しいわけでもないが

愛されるというのはどんな気持ちなのだろう
いつだってみてることしかできない愛というものを
知ることができる日はくるのだろうか

【愛】


1/29/2023, 3:17:00 PM