『子供のままで』
電車の窓から見える公園に、小さな男の子たちがサッカーをしているのが見えた。私は満員電車で体を痛めながら、理不尽に怒られる日々にただ身を委ねている。だから、あの子供たちが羨ましかった。
目当ての駅について降りると、たくさんの人が我先にと早歩きする。周りも大して見ていないようだから、肩が強くぶつかる。痛い。私はいつも、空気になるように小さくなって歩いている。情けないと思った。
もし、子供のままで生きてゆけたら、と思ってしまう。いちばん考えてはいけないことだ。
でも、でも。子供のままでいられたら、見知らぬ人に恐怖を覚えることも、理不尽な怒りを受けることも、見つめる先の虚空も、きっとない。大切な人への想いだって、きっとこんなに苦しくない。幸せという言葉の意味も大して知らない子供のほうが、よっぽど幸せだ。
羨ましいだなんてありふれた言葉で彼らを恨んでもいいのだろうか。だめだ。私は、彼らがこれからもずっと、幸せの意味を考えなくてもいいように、今より少しだけ素敵な大人の世界を作っていかなくてはいけないと思った。
5/12/2026, 11:04:00 AM