ななえ

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僕は、通学路の途中にある坂道を歩くのを毎日楽しみにしていた。
なぜなら、彼女がいつもこの坂道を自転車で降りていくからだ。いつも見れるのは一瞬の間だけしかも自転車に乗っているから声すらかけられないけど僕はその一瞬で満足だった。名前も知らない彼女が毎日元気に学校に行ってるってだけでしあわせだった。
でもある日から突然彼女の姿が見れなくなった。1週間、経っても坂を降りる彼女の姿を見ることは無かった。
僕は、心配で心配でたまらなかったが心配したところで知り合いでもない僕は何もすることができなかった。
彼女を見なくなって1ヶ月が経った頃僕は学校の友達から𓏸𓏸高校の女の子が僕がいつも通る坂を降りてる途中に飲酒運転の車に轢かれて死んだというのを聞いた。あの女の子が通っている高校だ。
僕はその話を聞いた瞬間嫌な考えが僕の頭の中を支配した。
その日の帰り道僕は坂の1番下のところに_𓏸𓏸高校の制服を着た女の子をみつけた。
花束を坂の下の端に置き手を合わせている。
普段なら積極的に人に話しかけたりなんて絶対しないのにその時の僕はどうかしていた。𓏸𓏸高校の女の子に近づき声をかけたのだ。
「すみません。失礼ですがこの花束は誰に向けたものですか?」
女の子はびっくりした顔をしていた。
そりゃそうだいきなり知らない人にこんな質問されたらびっくりするだろう。
でも、彼女は嫌な顔ひとつせず答えてくれた。
「ここで交通事故で死んだ友人に向けたものです。」僕の心臓が早くなるのがわかった。
だんだん怖くなってきたが僕は質問をやめなかった。いや、やめられなかった。
「その人の写真をみせていただけますか?」とぼくは頼んだ。
最初は、断られたが僕があまりにもしつこいので最終的には見せてくれた。
女の子が見せてくれた写真は僕が毎日見るのを楽しみにしていた彼女の姿だった。
どこか頭の中で分かっていたからなのか意外と冷静を保てられていた。
僕は、女の子にお礼を言いそのまま家に帰った。その後のことはあまり覚えていないけど僕は次の日お兄ちゃんに頼んで自転車を貸してもらった。
そして、いつもの坂を自転車出降りていった。降りてる途中ほんの短い間に彼女の姿が頭に浮かび僕は涙が零れた。
あと1回でいいから彼女に会いたいとただそれだけを願って。

8/14/2023, 7:20:46 PM