ふと、婆ちゃんによく似た声が聞こえた気がして振り向いた。
けれどそこにいたのは、婆ちゃんじゃなかった。
夏の暑さが少し和らいだ、昼下がりの公園。
私は2人用のベンチに座り、コンビニ弁当を食べていた。
そんな私のところに、そいつはやってきて言った。
「どーしたのぉ」
「……婆ちゃんのマネしないで」
「寂しそうだったから、つい」
それはまるで、凍てつく水面に素足のまま浸っているかのような。痛みのある会話だった。
幼馴染であり、腐れ縁でもある彼は言う。
「他にも人がいるのにな」
棘のある言葉。
確かに私には、他にも家族が多くいる。
友達も、親戚の人たちも、けれど。
「あたしの婆ちゃんは、ひとりだけだよ」
私はベンチを立つ。
「婆ちゃんにしか頼らないから、他のやつなんてどうでもいいってか?」
「どうでもいいんじゃないよ」
「じゃあなんだよ、興味ないってか」
そうだ、と言ったらどうなるか。
分厚い氷に、ヒビが入っていくかのようだった。
私にとって婆ちゃんは、かけがえのない存在だ。
だから……その穴を埋めようとしてくる彼らが、ひどく憎かったんだ。
頼ってほしいなんて、言われたくなかったんだ。
【素足のままで】
8/27/2025, 4:56:04 AM