月が凪ぐ夜

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昔から感情の乏しい子どもだと言われてきた。
楽しければ笑い、悲しければ泣く。そんな簡単なことがなかなかどうして難しいものだった。
姉のように、眠れないほど誰かを想ったり、食事も喉を通らないほど思い煩うことが、ずっと…ずっと羨ましかった。

けれどあなたに会って、些細なことで一喜一憂する私を知って、思い知る。
それがどんなに苦しいことなのかを…。

苦しくて、苦しくて、辛くて。それでもあなたに焦がれることを止められない。こんな感情を知るくらいなら、始めから求めなければよかった。知らない方が平穏で、幸せだったのかもしれない。
そう思っているはずなのになぜだろう。そんな苦しみさえ、あなたの前ではどうでもいいことに思えてしまう。

そうしてさらに夜は更けていき、朝日が差しては辺りを眩しく照らし出す。どうやらまた眠れぬ夜を過ごしてしまったらしい。

それでもあなたに会うことが待ち遠しい私は、あなたに会える期待を胸に抱いて、光に誘われるようにベッドから飛び出した。


【眠れないほど】

12/6/2023, 3:59:19 AM