NoName

Open App

 そういえば、時計の針が重なる時に、偶然時計を見ることは少ない。
 
 街で、からくり時計が動くところに遭遇することがある。そんな時は、つい足を止めてしまう。今まで静かに時を刻んでいたものが、時が来て、急に動き出す。小さな扉から人形たちが躍り出てきたり、灯りがついたり、色々な演出がある。

 一通り終わると、人形たちは、はい、終わりといった感じで、つーっと戻っていき、パタンと扉がしまる。時計はまた静かにひっそりと時を刻む。その何事もなかったような静寂も面白い。  

 見終わると、ちょっと得したようなうれしい気分になる。ましてや、針がピッタリと重なる12時に遭遇した時は、何かいいことがありそうな、そんな気がする。

「時計の針が重なって」

9/25/2025, 6:13:06 AM