誰だもが知らずの語り屋

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適当だ_(:3」z)_

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🕯️未知の交差点 第一話「灯のない信号」

秋の終わり、霧に包まれた郊外の旧道。
そこに、地図にも載っていない交差点がある。信号はあるが、灯らない。標識はあるが、読めない。通る車はないが、タイヤ痕だけが新しい。

高校生の灯(ともる)は、深夜に自転車でその交差点を通りかかる。
ふと、信号が赤く点灯した。誰もいないはずの道に、向こうから歩いてくる人影。
それは、数年前に失踪した幼馴染・澪(みお)だった。

「ここ、通っちゃだめだよ」
澪はそう言い残すと、霧の中に消えた。
灯は追いかけようとするが、交差点の中心に足を踏み入れた瞬間、世界が反転する。

目の前に広がるのは、見覚えのある街並み。だが、すべてが色褪せ、音のない世界。
交差点は、記憶と後悔を繋ぐ裂け目だった。

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🌘未知の交差点 第二話「月光の標識」

灯は、澪の痕跡を辿りながら、交差点の“向こう側”を彷徨う。
そこでは、過去に選ばなかった道が具現化していた。
進学を諦めた未来、告白をしなかった夜、澪に声をかけなかった最後の日。

交差点の四方に、それぞれの“if”が広がっている。
灯は標識に導かれ、月光に照らされた道を選ぶ。そこには、澪が待っていた。

「選んでくれて、ありがとう」
澪は微笑み、灯の手を取る。
その瞬間、交差点の信号がすべて青に変わり、霧が晴れる。

灯は目を覚ます。
朝焼けの中、交差点はただの古びた十字路に戻っていた。
だが、ポケットには澪のペンダントが残っていた。

それは、選ばれなかった未来から届いた、微かな証だった。

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10/11/2025, 12:42:49 PM