伊−ハ三六は規約違反をし続けてた。
超極小器械撒布用移動式製造機、通称〝蟻塚〟。
蟻塚の管理維持のために用意されている器械族は、永代区画を割り当てられており、伊−ハ三六は管理者の一員だ。
彼が他の管理者と異なる事は、自我を保有している事だった。
というのも、彼の主な仕事は斥候および外敵−蟲−の駆除のため、蟻塚の外で活動することが多く、且つ彼は「仮に人族または同族に邂逅し、助けを求めている場合は全ての業務をおいて優先救助をすること」という命題を与えられている。
そのため同期が不可能な外活動において、柔軟な自己判断を可能とする事は価値のある事だった。
しかし、同時に蟻塚内統制のために最重要な規制として「メモリ同期必須」が定められている。
彼は、その規制に違反し続けている。
違反してでも、ほかの蟻塚内住人に知られたくないと、そう思えるほど、あの兄妹や双子に出会えたことは、彼にとって輝かしい体験だったといえるのだ。
1/18/2024, 2:47:12 PM