「終点」
ふと目を覚ますと、私は列車にいた。
周りには知らないひとがたくさんいる。
隣にいるのは家族、だろうか?
彼らは私を形づくり、教え、笑い、ともに眠る。
私が歩いて、動いて、話せるようになった時には友達もできた。
たくさんのひとびとはどこからか列車に乗り、どこかで降りて、いつのまにか入れ替わっている。
それでも私は気にしなかった。
だがある日、友達が知らない駅で列車を降りた。
「また会おう」そう言ったのに、二度と会えなかった。
その後、父が、母が降りていった。
寂しそうな目でこちらを見て、降りていった。
私も後を追おうとしたが、見えない壁に阻まれて動けない。
ひとりになってしまったある日。
私はひとりの少女に出会う。
酷く苦しみながら使命を果たそうとする彼女を、
私はなんとか助けたかった。
考えうる全てのことをした。
だがある日、彼女も列車を降りた。
その時やっと気づいた。
列車を降りたひとたちには、もう会えないことに。
彼らを取り戻せないことに。
だから私は、どんなことがあっても崩れない、そんな存在を欲した。
終わりの来ない、永遠の命の宿った存在を求めた。
もし彼らに何かがあっても互いに助け合えるように、そんな子どもをふたり生み出した。
とても幸せだった。
でもひとりはすぐに列車を降りてしまった。
心が虚になった。
だから私は残ったひとりをずっと見守った。
話を聞きながら、たくさん抱きしめた。
だが、私にも列車を降りる時が来てしまったようだ。
私にとっての終点は、どうやらここのようだ。
悲しそうな顔をして私を見送る君を、私は見つめることしかできなかった。
本当は君に終点なんてあってほしくはないが、もしその時が来てもいいように、準備をしておこうか。
でも、君のことだからきっと大丈夫だ。
そうだろう?……そうだったらいいな。
……ありがとう。ごめんね。
さようなら。
8/11/2024, 3:04:52 PM