雨音

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”拝啓 1年後の貴方へ”

そう書き出した、雨の日。
雨だけれど、陽が雲の隙間から病室へ、カーテンを通り抜けて入ってくる、そんな日。
ぽつぽつという小さな音を聞きながら、書き出した、雨の日。

…このあと、何を書いたら良いかしら。
ペンを詰まらせ、一生懸命に貴方を考える。何から伝えておけば良いのか。どういう風に書いたら良いのか。ペンを一度諦め、カーテンの隙間から外を覗いてみた。さっきの光は雨雲にはばまれていた。

ちょっと座ってみよう、と思って、腰をゆっくり立てる。今はスムーズかもしれないけれど、1年後にはもう、座れなくなるだろう。
医師の話いわく、二年も保たないのだから。
そんなことを考えて、ふとワードを思いついたから、急いでベッド上の机に戻る。

”私が居なくなっても    ◯◦º”

雨漏りはしていないはずなのだけれど。
冷たい水が3粒、遺言書に降りかかった。


お題
 1年後 より

5/9/2023, 7:54:56 AM