Poison Girl dorothy

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かれこれ10年ほどになるだろうか。好きな人がいる。
恋愛的な意味合いとして………と断言したいところだけれど、この気持ちが本当に恋愛感情なのかは正直なところ、今は怪しくなっている。

最初は膨大な知識に対しての尊敬と、こんな兄がいたら良かったなという憧れだった。
それが段々と、一緒に何かを体験したい、一緒に居たい、抱きしめて欲しいという気持ちに変わっていき、ある日「私はこの人が好きだ」という自覚に至った。

しかし、好きと言うにはあまりにも、良き友人としての関係が長く続きすぎていた。
本人から恋愛には全く興味が湧かないとも言われていた(実際、はたから見ていてもそう思えた)し、今更「あなたが好きです」なんて言える勇気はなかった。

一度だけ、人づてに彼に伝えてもらったことがあった。
後日あれはどういう意図かと問われ、関係が崩れるのを恐れた私は冗談半分に返事を濁し、とても叱られた。

今は自分でも愚かな行為だったと思うが、当時は好きという気持ちを伝えたいものの、その結果によって友達という立場も失うかもしれないという怖さも大きかった為、パニックみたいになっていたのだろう。
叱られたことがショックだったからか、これ以降私は告白はしていない。完全に自業自得だけれど。


それから数年。
現在も、私は彼と良き友人関係だ。
彼のことは未だ好きだが、その気持ちに最初の頃のような熱量があるかと言われたら無いだろう。

出会って、好きになってから10年以上。
今ではこの〝好き〟が恋愛なのか親愛なのか友愛なのか、はたまたそれ以外の何かなのか、私自身にも分からなくなっているのだ。

それらを全部含めた好き、なのかもしれないが。




きっと彼には今、大切な人がいる。
そう感じてはいるが、怖くて聞けない。
もし「いる」と答えが返ってきたら、間違いなくショックを受けるし、悲しくて立ち直れないような気がする。

だから、まだ。

捻れて複雑になってしまった〝好き〟だけれど、この気持ちは恋愛感情なのだと、思う。

自分から踏み出せない臆病で卑怯な私にはお似合いなのかもしれない、この歪んでしまった恋物語は、こうしてまた今日も続いていく。

5/18/2024, 4:32:35 PM