かたいなか

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今日も相変わらずの仕事仕事シゴト。頭おかしい客は来るし、頭おかしい指示も飛ぶ。
最初言ってた話と、最終的に出た話が、全然整合性取れてないなんてザラ。
課長クラスはただ決裁だけやってりゃ良さそうで、新人いびりに余念がない係長は今日も安定の監視業務。
だいたい迷惑を被るのは、善良な客と真面目な部下。

どっか行きたい。
遠い、人も仕事もストレスも無関係な所に行きたい。
休業願望がポッコリ浮かんで、消えて、また浮かんできてを繰り返すのは仕方ない。
具体例として脳内再生されるのは、少し前、田舎出身の先輩から聞いた、先輩の故郷。「花と山野草ばかり」という、「遠い、何もない街」だ。
きっと電車なんて30分に1本で、バスも30分に1本で、道のわきに、いっぱい、花が咲いてて……

「2時間バス無し電車無しも、普通にあるが」
休憩時間にそれを愚痴ったら、先輩が電車とバスを訂正してきた。3時間だってあり得ると。
「花は、たしかによく咲いている。今なら、やっとフクジュソウの第一陣が、咲き始める頃だろうな」
本格シーズンは、まだ先だが。
付け足す先輩の目は懐かしさが滲んでるようだった。

「街の中でフクジュソウ咲くの?」
「咲く。どこかから来た種が、空き地で根付くんだ」
「フクジュソウの次は?」
「オオバコ科の、薄紫色したやつが」
「次は?」
「ニラを差し置いて、スイセンのツボミが」
「その次は?」
「春が来る。目にも、肌にも分かる春が」

今日は随分と質問攻めにあう。
ポリポリ首筋をかく先輩に、それでも脳内再生の解像度を上げたくて、見ず知らず、行ったこともなくの、先輩の田舎の花を聞き続けた。
暖かい、静かな街の朝を、スマホのカメラ片手に……
「想像を壊すようで申し訳ないが、3月はまだ、最低気温氷点下が、チラホラ」
「え」
「だから朝は寒い。なんなら雪が4月に」
「せんぱい いったい どこすんでたの」
「田舎だ。安心しろ、最高氷点下は3月で終わる」
「さいこう ひょうてんかって なに……」

3/13/2023, 2:42:26 AM