『うーん、まだまだ奥かぁ?』
ザクザクと、シャベルで地面を掘っていく。
「子供が埋めたんだから、もう出てきてもいいと思うけどな。」
「誰かに取られてたりしてな笑」
ハハハ、と笑いながら一緒に地面を掘る男二人は、俺の友人。
今日は、子供の頃三人で埋めたタイムカプセルを、大人になった今掘り返しに来たのだ。
『にしても、まさかお前ら結婚してるなんてさぁ。』
地面に視線を向けつつも、友人二人に絡む。
二人とも良縁に恵まれ、昨年結婚したのだ。
仲の良い奴らめ。
「まぁな、良い相手に出会えただけだよ。」
「そうそう、お前だって付き合ってる子いるんだろ?」
二人とも照れくさそうに、俺へと話の矛先を向ける。
『いるんだが、結婚はまだ先かなぁ。』
向けられた矛先をかわしながら、そのまま掘り続けた。
ガギンッ
今までの柔らかい感触から一変、硬い何かが当たったのか、高い音が響く。
『お?』
「これはもしかして……」
シャベルを横に置き、パラパラと土を払うと、銀色が頭を覗かせた。
「やっと見つけた~!!」
三人で周りの土を除いていき、徐々に埋もれていたものが姿を現す。
『は、懐かしいなぁ。』
カシャン、と軽い音を立てながら出てきたのは、銀色のブリキ缶。
蓋には紙が貼ってあって、俺ら三人の名前と「絶対に開けるべからず」の文字。
「早く開けようぜ。」
缶の周りについた土を丁寧に払い、蓋を開けた。
中には、当時好きだったアニメのシールや、0点のテスト、好きだった子に渡せなかった手紙など、子供の時の思い出が沢山詰まっていた。
「お前、0点のテストって……隠すために入れたのかよ笑」
「うるせぇな、お前だってそれ渡せなかったラブレターじゃねぇか。黒歴史缶にする気か?」
ギャーギャーと騒いでる友人二人を横目に、中のものを取り出していく。
よく読んでいた本、玩具のミニカー、友達とお揃いで買ったキーホルダー。どれも、かつての青春を思い出させるものばかり。
『……くだらないものかもしれないけどさ、』
俺の言葉に、友人達がピタリと止まる。
『全部、子供の頃の宝物だよな。』
どれを見ても、昨日の事のように情景が浮かぶ。
他人からすればガラクタに見えるかもしれない、でも、俺らにとっては、キラキラした思い出だ。
「そういえば、何でここにタイムカプセル埋めたんだっけ?」
「確かに、別に思い出の場所でもないよな。」
『あぁ、それはだな……』
横の方を指さすと、その指の方を友人たちは見る。
そこには、地元を一望できる景色と、真っ赤な夕焼けが見えた。
「おぉ、すげぇ……」
『子供の頃、一人で歩いてる時にここ見つけて、同じように夕焼け見てさ……』
親と喧嘩しただか、理由は忘れてしまったけど、とにかく、気分が落ち込んでいる時に見たのがこの夕焼けだった。その時もとても綺麗で、言葉じゃ言い表せないくらい感動したのを覚えている。
一人で見ても美しかったが、やはり、
『お前らにも、この綺麗な夕焼け見せたかった……から。』
夕焼けに当てられているせいか、変に顔が熱くなる。
今まで気にしていなかったが、なんとなく意識すると恥ずかしさが湧いてきた。
友人二人は顔を背けていたが、耳が赤かったのできっと顔も同じだっただろう。
「お、おま、そういうロマンチックなのは、彼女さんにやれよ!!」
「そうだぞ!!だから結婚できねぇんじゃねぇの!?」
『それは今関係ないだろ!?』
ギャーギャーと騒ぎ、取っ組み合いを始める。
昔からある馴れ合いだが、いつもと違ってみんな顔は不思議とにやけていた。
『結婚祝いに、今日はご飯奢ってやるよ。』
「お!!まじで??」
「焼肉?寿司?」
『馬鹿野郎、いつものファミレスだわ。』
ケチくせー、と言う二人を小突きながら笑う。
昔から変わらない時間。
前よりは集まりにくくなるだろうけど、これからも続けていきたい関係だと思う。
だって、俺にとっては、この二人はもちろん、一緒に過ごした時間全てが、大事な大事な “宝物” だから。
#宝物
11/21/2023, 11:32:43 AM