お題『わぁ!』
目の前にとつぜん飛び出してくるだけでもびっくりしたのに、でかい声をあげたものだからなおさら腰を抜かすじゃないか。
思わず尻もちをつく僕にクラスメイトが
「わりぃわりぃ、そんなにびっくりすると思わなかったんだ」
といいながら手を差し伸べてくれた。
彼は僕にとって遠い存在だ。見た目がかっこよくて、そこそこ背が高くて、いつもまわりに人がたくさんいて、一般的な陽キャに比べると発言に不快感がない。それどころか、面白いことを言って場の雰囲気を明るくする。
僕はそんな彼に憧れていた。だけど、近づくことは叶わない。僕はクラスの最下層にいて、一人で本を読んでるだけだから。皆、僕のことを空気みたいに扱っている。
それが急に来た春風みたいに彼はとつぜん僕の目の前に現れて、僕に話しかけて、僕に「自分の手を取るように」と言っている。
「わ、わぁ……」
僕はおそるおそる彼の大きな手に触れると、彼は白い歯を見せて僕を立ち上がらせてくれた。
「意外な顔が見れてよかった! とりあえず、一緒に学校行こ?」
まさかの誘いに僕は、しばらくフリーズする。だが、彼は僕の返事を待っている様子。
だから勢いよく、首がもげるんじゃないかってくらい頭を縦に振った。その瞬間、彼があっははとさわやかに笑う。
彼の隣を歩きながら、僕はかたいはずのアスファルトが今日はやけにふわふわしているように思えるほど夢のなかにいる錯覚を覚えた。
1/27/2025, 3:50:33 AM