桜井呪理

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僕が手を繋いでいるのは、僕の友達だ。

君はそう思ってはくれないけど、友達だ。


あの子が病気にかかった。

記憶を失う病気。

何かの表紙に記憶が消えて、決まったことが抜け落ちてしまうらしい。

あの子が失うことになったものは、

友達との記憶。

君に友達はいっぱいいたのに。

記憶がなくなって、みんな離れていってしまった。

でも。

僕は、僕だけは、君の友達でいたい。

誰も信頼できる人がいない、人間不信だった僕に手を差し伸べて、人と話せるようにしてくれたのは、他でもない君なのだから。

親のいないお互い。

ずっと一緒だと決めたんだから。


今日も君は僕に言う。



       「誰ですか?」


僕は笑顔で、


    「僕は亮太。友達になろ?」
                と返す。

いつか君の病気が治るかもしれない。

もしかしたら一生治らないかもしれない。

どっちでもいい。

僕が君のことを守るから。

でも。

君を好きだと言う気持ちが、

小さな恋心が、

届かないのは、

少し悲しいかな。

きっと届かないとわかっていても。

小さな声でつぶやいた。








   
       「大好きだよ」

10/26/2024, 2:39:27 AM