初心者太郎

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—届かぬ道—

嘘をつくか、正直に話すか、迷う場面が日常には潜んでいる。

「今回の結果もA判定ですね。この調子なら本番で多少ミスをしても十分合格点に届くでしょう」

共通テストを終え、本試験まで後一ヶ月となった。
今日は塾で三者面談をしている。模擬試験の結果を元に、志望校や受験方針を明確にする時間だ。

「あら、そうですか。この調子で頑張りなさい」

母はそう言った。
俺は医者を目指して、毎日ほとんどの時間を勉強に費やしている。
模試の結果は悪くないし、努力はちゃんと報われている。

いや、医者を目指しているのは俺じゃないか。

「将来はお医者さんになりなさい」という両親の言葉から始まった。俺は別の何かをやりたかったはずだけれど、それすらももう覚えてはいない。

その頃から嘘の道を進み続けた。

それから一ヶ月半後、本試験の結果が出た。

「これくらい当然ね。ここからが大変なんだから、気を引き締めなさい」
「はい」

嘘の道を進み続けて辿り着いた迷路の途中。これから俺は正解のゴールに辿り着けるのだろうか。

お題:心の迷路

11/13/2025, 8:32:46 AM