川柳えむ

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 どうして君が死ななくちゃいけなかったのか。

 この世界は、人間が棲まう人間界と、魔族が棲まう魔界に分かれていた。
 魔界には人間界を侵略しようとする悪しき魔王がいた。そして、人間界にはその脅威から人間界を守る力を持つ聖女がいた。
 魔王と聖女は同時期に現れ、自分の役目を終えれば消える。そう言い伝えられていた。

 ここ何百年は平和だった。
 しかし、魔王が世界に現れたことが分かり、人間界に激震が走った。
 一番大きな国の偉い王様がお触れを出し、早速聖女探しが始まった。まさかずっと一緒にいた君が聖女なんて思いもしなかった。
 聖女だと分かってすぐに君は魔界へと向かった。みんなの願い通り人間界を救い、そして、死んだ。

 聖女なんて体の良い生贄だ。そんなことにも気付けなかった。人間界を救うなんて格好良い役目だと素直に羨ましがった。
 どうして君が死ななくちゃいけなかったのか。
 世界に平和がもたらされた? 君はいないのに?
 聖女なんて関係ない。世界なんてどうでもいい。君がいなければ、この世界に意味はない。
 君の犠牲の上に成り立つ、この世界が憎い。

 剣を携え、城へ向かった。


『どうして』

1/14/2024, 10:53:08 PM