月凪あゆむ

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あじさい

 ――君の作ってくれる弁当よりも、たぶん、俺のほうが、料理旨いんだ。

 思い出すたび、ああ悔しい。
 あの、弁当屋の交際3ヶ月男が。そいつの、あの一言が。

 だって、料理なんてこれまでそんなにしたことないなかで。こっちだって頑張って毎日作ってきたのに!
 それくらい、「いいな」と思えた相手だ。これくらいで、フってもフラれてもやるもんか。
 
 そう思いながら、今日もお弁当を作ってきた。
 彼が見えた。 
「あの――」

「悪かった!!」

「……え?」
 なぜか、ピンクと白のあじさいを抱えて、彼は顔を赤くして、謝ってきた。
「その、あの後みんなに叱られた。思い出すと、俺も無神経なこと言った!」
「え、……え?」
 さっと、ピンクと白のあじさいを渡される。 
「あじさいの花言葉。ピンクは元気な女性。白は寛容、だって」

「ん? え?」

「だから、その。君の元気と、俺の、その。寛容?を……えっと……掛け合わせ……?」
 
 仲直りしたい、と。
 つまりは、そういうことらしい。

 なんだか、おかしくなってきた。
「なに、ちょっと馬鹿じゃないの」
「えぇ……?」

 まあ、いいか。
「今度、お料理のやり方、指南してよね」
「え、え、あぁ…………。もちろん! 君ならきっと、旨いのがつくれる! ……と思う」
「ちょっと! もっとはっきり褒めてよ!」

 とりあえず、やってみよう。3ヶ月男との日々は、案外悪くなかったから、これからもきっと、なんとかなる、だろう。




過去のお題「正直」の続きだったりします

6/14/2024, 3:56:29 AM