何もいらない
さくらは、ある人の元へ走る。周りが、羽交い締めにしようとするのを振りはらい、腰を掴もうとするのを転びながらも、避けた。
周りの大人は、さくらを座敷牢に閉じ込めたいのだ。誰にも目に触れさせないために。
さくらは閉じ込められるのは受け入れた。所詮、自分の人生は管理されるべきものと諦めていた。
だか、さくらにとって命と同じか、それ以上に大切な人がいた。自分の従者であり、彼の人生に常に寄り添い続けていた存在。
「あるじさま」
彼から呼ばれることで、さくらはなんとか生きてきた。
さくらはぼろぼろになりながら、屋敷の外に出る。
「 」
さくらは息も絶え絶えに、従者の名を呼ぶ。返事は聞こえないが、下から何かを叩いている音がかすかに耳に入った。
「 ?」
階段を駆け下りていくさくらの足は血にまみれていた。多大な激痛がするはずだが、彼は無我夢中で従者がいる所へ走る。
「あるじさま、ここです! はここにいます!」
「 !」
従者の声に、さくらはついに門へと辿り着く。今まさに従者は締め出されると言ったところだ。
「待って、待って、やめて!」
途端時間が止まったかのように門扉の動きが止まった。
「……あ、あるじ、さまっ……」
従者はその光景を一瞬だけ目に映したが、すぐにさくらへと走り出す。さくらも従者の元へと行く。
「 」
「あるじさま」
二人は座り込むような姿勢で互いを抱き締めている。
従者は、さくらの足の怪我を心配そうに見ていたが、主の手の力が強くなったのを感じると、そちらに意識を向けた。
「 。お願い、側に居て」
「……よろしいのですか。わたくしは……」
「貴方は私の 。一緒に生きて。例え、国の者であろうと、もう、私、貴方がいないと立ち上がれない」
「あるじさま……」
「何もいらない。欲しくない。だから」
「是と言って、 」
4/20/2026, 2:34:07 PM