そして、
月さえも寒色に染まり、身震いしそうな外の空気に冷たく息を吐く。ほとんど寒いしか言い合わないような中身の無い会話の最中、どちらともなく手袋越しに手を重ねる。こんなことで暖はとれないと知っているのに、少し乱暴に前後に動かして身体を温める。彼はいつもみたいに、まるで子どものようだと笑いながら自分の動きに付き合う。彼よりも少し遅く生まれただけで、もう子どもなんていう年齢じゃないのに。きっと自分の方が体力はあるのに相変わらず重いものは持たせてくれないし、ブラックだって飲めるのにミルクをつけてくるし、お酒を飲んでいると心配そうな顔をする。今だって二人分の夕食の野菜が入ったカバンは、繋いでるのとは反対側の彼の手が握っている。おしゃれな服には似つかない大きめのネギがカバンから飛び出しているのが見えた。
彼と出会ったころの自分は確かに子どもだった。自分にとって彼が優しいお兄さんから違った認識になっても、彼の中でいつまでもかわいい子どもという意識は消えないらしい。その甘やかす行為はもはや手のつけようがない。仕方がないから、普段は仕事にかかりきりで食事さえも疎かにする彼に、お鍋がおいしい季節を教えてあげよう。そして、願わくば、これからどれだけ歳を重ねようとも、彼にかわいがられながら冬を越せますように。
10/30/2025, 12:54:34 PM