「昨日一睡もできなかった」
って友達に言ったら笑われた。
仕方ないじゃないか!だって今日は、彼女ができた年の初めてのバレンタインだ。
「そんなに心配しなくても、貰えるだろ」
うるさい。お前は実際に彼女ができたことがないからそんな事が言えるんだ。
心の中でぼやき、俺は空を見上げた。
晴天。絶好のバレンタイン日和だ!
大丈夫!もらえる!もらえるさ!!
震える拳を握りしめて、大きく深呼吸してから、学校への敷地へと踏み込もうとしたその時だった。
「おはよう」
彼女の明るい声が背中から飛んでくる。
俺が何か言う前に、彼女が口を開いた。
「これ、バレンタインのチョコ。家に帰ってからあけてね」
ちょっと上擦った声と、早口。
駆け足で去っていた彼女の耳は真っ赤だった。
「よかったな」
「……おう」
赤いハート型の箱に丁寧な包装。ピンク色のメッセージカードには『これからもよろしく』の文字が彼女の筆跡で踊っている。
俺の口角がいやがおうにも釣り上がる。
これが、あぁこれが、幸せなのだな。
2/14/2024, 11:20:29 AM