(幸せとは)(二次創作)
長かった冬が終わり、春がやってきた。
この牧場に来るまでは、ピートにとって春はただの季節の一つでしかなかった。学校を出て、何となくダラダラと過ごしていた当時の自分は、季節を気にすることもなく生きていた。それが今や、春の訪れが嬉しくて仕方がない。
「ふふ、今にでも飛び出してしまいそう」
妻のイヴが、可笑しそうに目を細めた。
今年の春は、ジャガイモを主軸に育てるつもりだ。ここに来てすぐの頃は、よく判らずに耕してない地面に種を蒔き、無駄にした。今は違う。蒔ける土とそうでない土の違いは判るし、密集させすぎて発芽した後にじょうろの水が届かないなんてヘマはしない。
「イヴは何するの?子供達なら、畑の近くで遊ばせとけばいいし」
「私はまずは、甕の確認かしら」
イヴと結婚したのは2年前の夏の終わりだ。牧場に来てすぐに、彼女に出会い一目惚れした。一緒になってそろそろ2年経つが、今でも家に帰って彼女がいると、ちょっとびっくりしてしまう自分がいる。不思議なものだ。
約束通り子供達を近くで遊ばせながら、ピートは鍬を振るっていった。秋も冬も作物が育たないこの地域では、土仕事は本当に久しぶりだ。たまに、耕した土を足で踏みならして遊んでいる子供達を捕まえたりしながら、夕方にはジャガイモ畑が完成していた。
「うーん、我ながら完璧」
ひと足先に帰った子供達を追うように自宅に戻る。いい匂いが漂い腹の虫が鳴いた。これが幸せなんだろうな、と思う。人生修行だなんて言われてここに放り込まれた日からは、到底想像できなかった未来だった。
(そう言えば、親父たちが様子を見に来るって言ってたな)
牧場はもちろんだが、結婚して孫までいるなんて、知ったらきっと開いた口が塞がらないはず。母親は涙ぐんでしまうかもしれない。その様子を想像して、少し楽しみになるピートだった。
1/4/2026, 11:58:27 AM