とある恋人たちの日常。

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 最近できたコンセプトカフェに行こうと職場の仲間に連行された。
 出来てから一週間経っているから、客足も落ち着いているからと言うことで、そういう場所と知らぬままに連れてこられた。
 
 勿論、部屋によっては教室だったり、専門教科室だったり。調理場が家庭科室、スタッフルームは職員室と微妙にこだわりを感じる。
 お客さんも学生になれるとコスプレ衣装も貸し出されていて、面白そうと思った。
 
 俺は見た目的に童顔の部類に入るからと、学ランをコスプレしろと渡され、結局来たみんなでコスプレすることになった。
 一人なら恥ずかしかったけれど、年齢気にせずみんなでやるから恥ずかしさなんてどこかへ飛んで行った。
 
 写真を撮ったり、色々話しているうちにまあまあ時間が過ぎたと思った頃合いに、近くで盛り上がっている声が聞こえる。
 
 聞き覚えのある声になんか心に引っかかって、俺はトイレに行くと離席して声の主を探した。周りを見て歩くと向こう側から、それこそ聞き覚えのある声が耳に入った。
 
「あっ!」
 
 その声のする方に振り向くと、恋人が彼女の同僚と一緒にいて、俺と目が合った。
 
 彼女が思わず零してしまった声と、視線の先に俺がいたことで、彼女の同僚はニヤニヤしながら俺たちを交互に視線を送る。
 
「ちょ、ちょっとすみません」
 
 慌てて恋人が俺のいる方に出てきてくれると、俺の腕を引っ張って人気の少ないところに連れていかれた。
 
「な、なんでここにいるんですか!?」
「いや、そっくり返すよ。しっかりコスプレしちゃって」
「学ラン着ている人に言われたくありません」
 
 お互いに声を小さくしながら、今の状況の説明を求めあった。でも、怒っていると言うよりは、驚いていたようだった。
 
 マジマジと俺の全身を見て、目を細めて微笑む彼女はそっと耳打ちしてくれる。
 
「可愛いですよ」
「それを言われて喜ぶ男は少ないと思うよ」
「でも、可愛いですもん」
 
 俺も彼女の全身を見つめると、ほんの少し唇が尖ってしまった。
 
「相変わらず無防備」
 
 彼女はセーラー服に身を包んでいるのだが……スカートが短いのだ。
 自分のプロポーションの良さと可愛さをもっと自覚して欲しい。
 まあ、一緒に来ている同僚達は女の子ばかりだからか、どうしてもその辺の感覚が鈍くなっちゃうのかな。
 
「そんなことないですよ?」
 
 納得がいかない彼女は首を傾げる。そういう仕草も可愛いんだけれど。
 
 一つため息をついて考える。
 
「似合いませんか?」
「似合ってる、可愛い」
 
 その言葉を聞くと、頬を赤らめながら笑ってくれた。うん、可愛いです。
 
 彼女は俺の手に自分の手を重ねた。
 
「放課後、どうしますか?」
 
 放課後……?
 あ、この後ってことかな?
 
 ここは学生をコンセプトにしたカフェだ。彼女はそれを楽しみ始めたようだ。
 場所が場所だから、俺も乗ることにした。
 
「連れ去っていいなら、放課後デートしよ」
 
 俺の言葉の意味を理解した彼女は嬉しそうに笑ってから、俺の肩に自分の額を乗せてくれる。
 
「嬉しいです。みんなに言ってきますね」
 
 
 
おわり
 
 
 
一四九、放課後

10/12/2024, 12:20:24 PM