はた織

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 読み聞かせしている相手のお腹に耳を当てて、物語を聞きながら相手の内臓の音を楽しむ子どもがいたらしい。発想がなかなかに面白い。そして、子どもゆえの我がままだ。
 絵本の内容だけでは物足りず、語り部の身体を抱きしめ、お腹に耳を傾けて、物語の音を身体の底から存分に楽しもうとするその強欲さを見習いたいものだ。
 身体だけすっかりと大人になってしまった私にはもう難しいことだが、実際に読み聞かせする人間のお腹に耳を当てたら、どんな音が聞こえてくるだろうか。胃液がちゃぽちゃぽと波のように鳴り響くだろうか。胃の奥から、心臓の鼓動が微かに聞こえてくるだろうか。もしかしたら、お腹いっぱいに詰まった言葉たちが、体温を通して語りかけてくるかもしれない。
             (250613 君だけのメロディ)

6/13/2025, 12:32:47 PM