「⸺っぁ……ケホッ…っ」
思う様に、声が出ない。
声が枯れるほど、唱えて…泣いていたんだろう。
そのことに気づいて、虚しくなった。
私は、なんで生き延びたんだろう……って。
生きているのが、助けられたからなのは、分かってる。
けど、私の中の命を…私の大切を………捨ててしまった。
痛い苦しい辛い悲しい嫌だ嫌だ嫌だ。
なんでどうして私だけなの独りはやだよやだなのいやなのに………誰も、いないんだ。
魔法が使えたら。
身を守る魔法が使えたら。
敵を倒す魔法が使えたら。
誰かを癒やす魔法が使えたら。
……時間が戻る魔法が使えたら、良かったのに。
使えない、使えない、使えない。
⸺あぁ…そうだ。夢を見よう。私の大切があって、みんな幸せで、それで、ちょっとの困難を乗り越えられて……どんな魔法も使える夢。
そうだよ、夢を見ればいいんだよ。
夢を見て、創ればいいんだよ。
声が出ない?そんなの気合で出せばいい。
ただ一言、言えればいいんだよ。
それを言えば、夢を創って……夢を見れるから。
「…っ、おや…すみ、なさい……せか…ぃ…」
唱えたら、目の前が暗くなって、私の意識はボタンを押したみたいに、パチリと消えた。
【夢の始まりは、彼女だけが知っている】
10/22/2024, 3:35:58 AM