しじま

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 ゲートが開いた瞬間、誰よりも早く飛び出して前を取る。

 他の奴等なんかに譲ってやるもんか。

向かい風に煽られながら芝の上を爆走、あっという間に1ハロン。

 地を蹴るたびに首筋に鬣が当る心地良さに恍惚しかけて、ムチが鳴った。あぶないあぶない。
抜けかけていた気合を入れ直して、弛い坂を駆け上がり、これまた弛いカーブをラチぎりぎりを攻めつつもゆったりと走る。

追い風に乗って後ろから、地鳴りのような足音が聞こえてくる。 が、届きはしない。

緩めていた脚に力を込める、フンスッと鼻から勢い良く息を吐く。いくぞ。

手綱が緩んでムチが一発入る、それに応えるように地を蹴り上げた。

 誰かの後ろを走るだなんて、気が狂っちゃうくらいの屈辱よ。

テーマ「ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。」

5/30/2023, 1:18:39 PM