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蒸し暑い体育館から這い出るようにして外に出てみたが、期待するほどの風はなく、遠くの方でもうすぐすれば『入道雲』になりそうな雲を見つけた。
そろそろ長雨もどこかへ行ってしまうのだろう。
濡れたグラウンドの湿り気の匂いもきっとそのうち忘れてしまうように。
少しばかり過ぎていく日々に感傷的に浸っていても、ポケットで震える振動はいつだって現実へ戻していく。
表示された名前に僅かばかりの動揺と、小さく芽生えた心。
ひとつ、ふたつ。
深呼吸して、平常心。
遠くにいる恋人の声はそばにいないのに、近くで見ているような気にさせる。
過剰なくらいの気遣いと賛辞はひとを少しなら良薬、多ければ堕落させていく毒のよう。
そんな彼にも悩みはあるようで。
ぽつぽつと紡がれる言葉の端に、漠然とみえる、未来。
将来どうしようか、なんてまだ先のこと。
そうは思いつつも。

「まあ、まだはっきりとは決めてませんが、あなたならどっちも選ぶんでしょう?」

好きな道も人を導く道も。
そうやって僕もあなたの夢に自分の未来を重ねたのだから。

6/29/2024, 2:52:33 PM