14歳になった底辺

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響き渡るチャイムの音。私の学校は家から遠い。
だからこれは私が、私の学校にいるから聞こえるチャイムの音だ。
久しぶりだ。
この音を聞くと冷や汗が止まらない。
わすれていたこの感覚。一人になりたい。
誰も居ない廊下に一人で言って自由に呼吸して一息吐こうと思った。
顔も知らない同級生の制服を掻き分け
やっと出てきた廊下は一年生が屯していた。
同学年ですら顔が分からないけど初めて見た色の名札で後輩なんだと知った。
私は2年生だから、先輩。
普通ならここで注意しても怒鳴っても良いはず。
でも私にはそんな権言ない。
多分無視されて後で陰口を言われてしまう。私はそう言う物なのだ。
後輩とか先輩とか関係ない人生の負け組....
誰でもどう言う立場でも無視していいと決められた存在

やっと落ち着く場所に来れると思ったのに、
一年生が居たらどうしようもない。
態々ここまで来たのに、急に振り返って元の道に戻って行くと
一年生達に
「アイツ先輩のくせにココ通るのもビビってんのな」
って噂されるかもしれない。そう思うと足がすくむ。

でももしこの廊下を通るなら後輩に何か一言かけないといけない。
「ちょっとどいて」とか
無視される気がしかしてこない。どうしよう。
私は結局通るよりはマシだと思って来た道を歩き始めた。
心臓がドキドキして鼓動が早い。何で私こんなことしてるんだろう。
あっ..休み時間がもう直ぐで終わる。
もしもう皆んな席についてて、私が静寂な中一人歩いて席に座って、注目を浴びたらどうしよう。
歩いてら席についてもみんな私を待ってるかもしれないし、強がって歩いてるようにも見られてしまうかもしれない。
でも走ったら、なにこのキモいオタク走り方変だな
とか思われるかもしれない。不登校だし矢ッ張り変な奴なのかと思われるかもしれない....失望さえもされない。期待されてないから...

何でこんな被害妄想しか思いつかないんだ....
これは矢張りあの出来事があったのだろうか。


14歳で夏だった。
一年生の頃から仲のいいナツちゃんはとってもお人好しの可愛い完璧な女の子だった。
とっても仲良しな私たち。いつも二人で遊んでいた。
いつも陽気で明るい女の子達と話してても、
私を見ると話を割り切ってこっちに走って来て、
私を優先してくれていた。
私はそれが勿論嬉しくもあったけど、
その陽気な女の子、その子を仮にEさんとすると、
そのEさん達グループは私をよく思って居ないんじゃないかと不安にだった。
それでもそのナツちゃんは私をいちばんの友達として、それだけで、私と行動を共にしてくれて居た。嬉しかった。

そんなある日、
夏休みに入ると言う事で課題がたくさん出た。中学に入って二回目の夏休みだけど、
中1の頃の夏休みは何をしたか全く覚えて居ない。
たしかその頃にナツちゃんと会ったんだよね。

でも夏休みになっても部活も一緒。家も近所。私達の仲に関しての不満は一切なかった。

むしろ、皆んなは気軽に遊べないかもしれないけど、私たちは、その気になればいつでも会える。その事で少し鼻が高かった。もっとも、勿論表には出して居ないけれど。

夏休みになってナツちゃんと沢山遊んで、更に仲が深まるような気がした。
でも実際は、夏休みに入ると暑くてそれどころじゃなかった。ナツちゃんも部活休んでいたし、私も最初の二、三日でサボった。
ナツちゃんからの遊びの誘いも無かったし、
その年の夏は尋常じゃない程暑く感じたからナツちゃんも同じ状況なんだと思った。
お互い直ぐ会えるけど必要以上に会おうとしないと言うのが何だか仲のいい親友みたいで、気持ちが良かった。

だけどそう思ってたのは私だけだったんだよね。

夏休みの登校日。久しぶりの学校に、久しぶりの先生やクラスメイト。それからいちばん楽しみにしてたナツちゃん。
挨拶してお互い夏休みにあった事を報告し合って居た時。
Eちゃんが前の扉からドーンと現れた。
別にデブとかじゃなくて、あの感じや表情に効果音をつけるとするとこれがピッタリだったのだ。

すると、
ナツちゃんは私に、「またあとでね」って言ってEちゃんの所に行ったんだ。
その時はショックを受けたけれど、前まで少し話してたし、久しぶりだからキット、色んな人と話してみたいんだろうと思って私はその日、一人でトイレに行った。
放課後、ナツちゃんを久しぶりに遊びに誘おうかなとか、今日の担任めっちゃ焼けてて面白かったなとか思っていた。
個室で、ほんとうは駄目な事だけど、私はお菓子を食べていた。久しぶりの登校日だし、午前中に終わると言う事で心が弛んでいたのだろう。
すると急に大きな笑い声が聞こえてきた。
私は凄くビックリして声のする方向を見た。
その方向は真逆の上だった。隣の個室から便座に立ち、上から私を誰かが覗いていたのだ。
確かにこの個室は、中学校では頑張れば覗けるで有名だった。だけど実際にそんな馬鹿をする人は居ないし、
先ず私がトイレに来た時は人が来る気配なんか無かったから、何も考えずにその個室に入っていた。
その笑い声は続けた。
「トイレでお菓子食べてるの〜!?汚ったなぁ〜!wそれに、皆んなで食べるとかデブじゃん!w」
笑った顔の正体はEちゃんだった。

それと同時に個室の外から大量の笑い声が聞こえた。
一人や二人じゃない。何人もいる。
Eちゃんは笑いながら便座から下りて何も言わない私の個室をドンドン叩いた。
「おーい!出てこーい!花子さぁん」
そう言うと更に仲間が笑った。
私はトイレの中を見られたのがショックだったし、
状況が飲み込めずに居た。
今までお互い、存在だけ知ってるだけだったし、知り合いかどうかも怪しかった。

だから私は何も考えられなかった。
仲間も加担してドンドンドアを強くたたいてくる。
先生は何故かこない。
私の息はだんだん性能が衰えていって、胃の中きら摩擦か何かで口から火が吹き出しそうな程だった。
私は確かに、不衛生な方だと思う。
普通はみんな個室でお菓子なんて食べないことも知ってる。
でも個室を覗かれて皆んなに笑われるなんてあんまりだ。
私は息をのんでから
「何でこんなことくるの?」
と怒りもノリも含めた声で言って鍵を開けて、たたいている手が止むと扉を開けて笑って見せた。
「バレちゃったじゃん。ふふ、まぁいいやこれグミだけど、いる?」
と出来るだけいつも通り接した。
するとEちゃんは、真面目な透き通った声でしっかりと言った。
「は?汚ったな。そんなの食べるはずないでしょ。アンタが触った奴だよ?ねぇ?」
と。
私はわざとEちゃんがこう言う反応をとっていると
言う事を知っているのに
七人程いる全員が全肯定しているのを見て
私はどう足掻いても一人な存在なのだと初めて自覚したのだった。

これだけじゃない。
これがただ始まりだったってだけで、これより酷いのも有れば、優しいのもあった。
地獄の一年半だった。今までで最悪の夏休みだった。
そのことだけを覚えている。
私はクラスで無視されて当たり前の存在になり、空気の様な私は完全先生の前ではグレーだった。
黒と白の間。黒が偶にあるニュースに出ているようないじめで、白が何ともないクラスメイトだとしたら、グレーだったのだ。だから先生は口出ししないし、相談もあまり乗ってくれる様子は無かった。
だからかもしれないが地獄だった。
私は中学2年生の冬休みから不登校になった。
学校から家は遠いが、外にでると、Eちゃん達がいて私をまた虐めてきたらどうしようと不安になって外にも出られなかった。
声も出せなかった。
ひたすらゲームしかできなかったのだ。
ゲーム以外のことをしていると直ぐに泣いてしまう。
例えば勉強だと、全然分からないと不安になった。
だってどんなに頑張ったって所詮不登校だし、
親に迷惑かけるし、どれだけ学校に通えたら良いものかとひたすら考えた。
学校に毎日通う様だったら、私は確実に死を選んだ。
それ程学校とは憂いを与え、私をいい燃料として使うような圧迫感を背負わす存在だった。

だけど中3のちょっと前、急に火がついて前の様に振る舞えらようになった。少しずつ外に出られる様になった。
こう言う時間経過で治りますっていう記事は全く信じず、自分だけは例外だと思っていた。
だけど、全く進まなかった勉強はあり得ないほど捗った。
少し自信がついた。私は偏差値39から一年で偏差値55の高校に受験し受かった。入試一週間前なんて心臓がはち切れそうな程不安だった。明るい未来が見えた。世界が輝いて見えた。高校生になってこの高校に入れば何故だかEちゃんも居ないし、よくやっていけると思ってた。

なんでそう思ってたんだろうなー

私はチャイムのなった静かな校舎をゆっくり見渡し、親の顔も思い浮かべず鞄も置いて、手元にあるスマホだけ持って学校を出た。
私が教室にいなかったら気づくだろうか。
最初から休んでたと思われるのだろうか。
先ず、私の存在を認識しているだろうか?
私はため息を吐いてから冷たい壁の校舎をゆっくり触りながら外に出た。外は急に大きな雨が降ってきた所だった。

何も考えたく無かった。
限界だった。
そう。ただもう何も、考えたく無かったんだ。
思い出したくなかった。

こんなありきたりな言葉を使ってて思う。
言葉って、物凄くしっかり出ているんだなーって。

私はスマホを投げて雨にあたり乍ら外にある錆びた非常階段を登った。あまり時間をかからないで屋上に着いた。
曇っていて街は見えにくい。私は屋上から灰色の雲を眺めた。
自分の体が何で支えられているのか分からなくなるほど力が抜けた。私は実は頭だけでこの体は違う誰かが動かしている様に感じた。
自分とは違う意志で体は動く。本当は出入り禁止の屋上。フェンスはボロかった。直ぐ乗り越えられた。
その時、私の世界はスローモーションになった。私は誰かに背中を押された。私は空中で彼女を見た。
それは、私だった。間違えなく、私の顔。
考えるまもなく私は意識を失う。雨の音のなか鈍い音は殆ど踏み潰され、血は雨で増えたように見えた。

雨は静かに止んで虹が浮かんでいた。



7/16/2024, 3:58:55 PM