放課後
いつもの様に、自分の教室で彼の迎えを待つ僕。
最後のホームルームなんかとっくに終わって、教室には僕一人だけ。
「……また、いつものかな」
机に突っ伏して、小さく呟いてみる。
その声は少し震えていて、自分が今不安なんだと思い知らされる。
僕の待つ彼は、背が高くて顔もかっこよくて見た目は完璧。
でもって、誰にでも優しいから中身も完璧。
ってことで、当然女の子から大人気の彼。
だから、放課後は女の子に呼び出されての告白が頻繁にあって。
しかも、一日に一人じゃなくて何人もいたりするから時間がかかる。
僕は彼を待つ、この時間が大嫌いだ。
だって、君が女の子に取られるんじゃないかって不安になるし。
取られたくない、なんて我儘な自分が嫌になるから。
君と僕は、ただの幼馴染。
普通の友達よりちょっとだけ仲が良いだけ。
だから、君は僕のものじゃない……のに。
「……たまには女の子達じゃなくて、僕を優先して」
なんて。
僕の我儘が口から溢れる。
すると。
「そんなこと、いつも思ってたの?」
と、机に突っ伏す僕の頭上から、突然、彼の優しい声が降ってきて。
「っ!いや、それはっ、その…そう、じゃなくて」
弾かれた様に顔を上げた俺が、動揺の余り狼狽えながら、咄嗟に否定してみせるけど。
彼は相変わらず、優しく笑っている。
「ちゃんと言ってよ。ちゃんと聞くから」
「…………」
僕は昔から、彼の優しい笑顔に弱いから。
少し躊躇った後。
「僕を優先してほしい……寂しいから」
と、正直に白状すれば。
よく言えました、と彼が頭を撫でてくれる。
そして。
「うん、約束する。これからはホームルームが終わったら、真っ直ぐに君を迎えに行くよ」
「え……良い、の?」
女の子達が彼をほっとくワケないし。
君は優しいから、それを無視出来ない筈なのに。
なんて、俺の思ってることが伝わったのか。
彼が困った様に笑って。
「俺、君が思ってる程優しい人じゃないよ」
好きな人のお願いなら、何よりも優先したくなるんだから。
そんな、彼から俺の耳元で囁かれた言葉は、俺の願望からくる幻聴だったりはしないだろうか。
さっきまで不安で憂鬱だった気持ちは吹き飛んで。
俺はドキドキと煩い心臓の音で、何も考えられなくなって。
ただただ、独り占めしたいと思う彼を見つめるのだった。
End
10/12/2024, 11:17:38 AM