見つめられると。
ある日私と彼は喧嘩をした。
単純なことだ。
私がまた意地を張ってやっていたらそれを彼に図星をつかれ、カッとなってしまった。
「あなたってほんとうに無神経ね」
ああ、こんなきつい感じで言いたくなかったのに。
彼は怪訝そうな声でこちらを問い詰める。
「…何が?君が無理をしていることを言ったのが?」
それのどこが悪いのか?といつもより低い声で問い詰められる。
「無理なんてしてない!私はただ、頑張らなきゃ、って」
「頑張らなくていいんだよ、それが無理してるんだって」
私がどんな思いで毎日過ごしているかも知らないくせに!
私は頑張らないと周りに追いつけないんだからやらないと!
これぐらいできて当然なのに!
だから毎日やってるのに!!
私の今までの努力なんて無駄だと言われたとみたいで声を荒げようとする寸前で堪える。
落ち着いて、と思いつつどこか心が冷めていく。
私がやってきた努力なんて、あなたからみたらやめていい、と捨てられるぐらいのものなのか。
私がなんて言っても無駄な気がして、この場にいたくなくて後ろを向く。
「待ちなよ」
手を取られ正面に回り込まれる。
「離して」
「ちゃんと言ってって。言葉にしてくれなきゃわからない、って言ったよね?」
「っ、だから、」
肩に手を置いて目を合わせられる。
やめて。このままだとあなたの事を口汚く八つ当たりしそうなのに。
それでもあなたはきゅっとした目で私を見つめる。
ああ、知ってる。
本当はせっかちなあなたが辛抱強く私の話を聞こうとしてる、その癖。
そんな目で見られると、話してしまいそうになる。
私は纏まらない言葉を溢した。
「無理、ぐらい、しないと私は駄目なんだもの…、辛いなんて言えないよ…」
「駄目じゃないよ」
「だって、私の価値なんて、これぐらいできなきゃ」
「君は駄目なんかじゃない」
「…もう、むり、しんどいぃぃ…」
幼子のような言葉に私は恥じらいを覚え顔を伏せた。
そんな私の頭に彼の手が乗せられる。
「うん、ちょっと休もうか」
ああ、カッコ悪い。
***
3/29/2026, 9:21:13 AM