涙
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私は涙脆い方だ。
ドラマでよくある陳腐な御涙頂戴のシーンでも涙を流してしまう。
それだけ感受性が豊かで、色んなことに一喜一憂して、生きづらくもある人生だ。時々嫌になる。
数年前、友人が亡くなった。学生時代を終え、人生これからという矢先だった。
学生時代、一番長い時間一緒に過ごしたと言って良い、大切な友人だった。
涙は出なかった。
人は大切なものを失うとこういう感情を抱くのかと、現実の事態とは裏腹に、いやに浅く、冷静な感想が出てくるのみだった。
人の命は、蝋燭の火がふっと消えるように、かくも儚い。けれど、ゆらゆらと熱を滾らせている限りは、周りの人に温かみを届けている。ケーキに立てられた蝋燭が、どこかで誰かの誕生日を祝っている、そんな姿を想起させる。人とはそういう存在だ。
少し昔のことを思い出してしまった。
私は蝋燭の火を吹き消すように、ふうっと息を吐き、涙を拭った。
3/29/2025, 11:59:26 AM