無音

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【55,お題:秋恋】

それは突然のことだった

親が神主の私は、よく神社の掃除を手伝わされていた
銀杏と紅葉の木が並ぶ、参道の周りの掃き掃除

いつものことながら、毎日やっていたらさすがに飽きる
しかも今日は風が強い、軽い落ち葉は私を弄ぶようにあっちへこっちへと舞い踊った

早く終わらないかな~とか、今日の夕ご飯なんだろうな~とか
雑念まみれで、ひたすら手を動かす

...チリン

「鈴の音?」

...チリン

なんだろうと、首を回らしていると
ぶわっと一際強い風が吹いた

後ろに気配を感じて振り返る、寺育ち舐めんな

「えっ...と、どちら様ですか?」

踊り舞う木の葉の中で、優雅に着物を着こなした背の高い男性
青い短髪に、秋を閉じ込めたような赤と黄色の混ざった瞳

手首につけた数珠の鈴がチリンと鳴って、その人と目があった

「あ、どうも...」

うわ、まつげ長...めっちゃ顔綺麗だなこの人

「君は...俺が見えるんだね」

そう言ってふにゃんと細められた目元
秋だというのに、彼の周りだけが春のようだった

9/21/2023, 10:55:35 AM