好きな色
好きな色を聞かれて「水色かな」と答えると、「普通だな」と鼻で笑われた。
私は少しむっとして、そういうあなたは何色が好きなのかと問い返した。
「☆♬∞♡色だ」
「……なんて?」
「☆♬∞♡色だ」
それは人間の耳には言語として認識できない音らしかった。
「それはどんな色なの?」
「水の色だ」
「水の色は透明だよ」
「いや、☆♬∞♡色だ。お前の星にいる生き物には見えない色だ。つい先ほど、お前の目にも☆♬∞♡色が見えるように改造した」
そう言われても、学校帰りにUFOに拉致されて目隠しをされているから、変わったところは何もわからない。
「いったい何のためにそんなことを?」
半信半疑ながらも尋ねた。
「社会実験だ。この世の全ての色が自分の視界の中に揃っていると思い込んでいる人間に、新しい色をひとつ足してみるとどうなるのか」
次の瞬間、私は自分が元いた地上に立っていることに気がついた。そして、目隠しのない視界には、今までとは全く異なる世界が映っていた。
ああ、これが☆♬∞♡色……。
☆♬∞♡色はたしかに水の色だったし、水色よりも好みの色だった。だから私の好きな色は結局水色なのだけれど、それを人に言うと「普通だね」と言われる。
6/21/2024, 4:29:28 PM