哀愁をそそる
友人から渡された彼の小さな遺品。
これだけしか…小さな声で友人は申し訳なさそうな、今にも泣き出しそうな顔で言った。
私は平気だ、なんて嘘をついた。本当は悲しくてたまらない、彼が死んだなんて信じられない。手の中にすっぽり収まってしまう彼の髪の毛の束をそっと握った。
いつか一緒に南の島で王国を作ろうと豪語していたあの人が、綺麗な黒い長い髪の毛を靡かせていたあの人が、私よりもとても大きかったあの人が、こんな呆気なく死んでしまって、こんなにも小さくなってしまったなんて信じられない。でも手に力を入れ髪の束を握る度に彼は死んだという事実を受け入れざる得なくて、私は膝から崩れ落ち大きな粒の涙を流した。
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11/4/2021, 2:36:07 PM