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ふたり

白髪が混じった坊主に近い短髪の頭と小さく丸まった父の背中を眺める。

2年前に母が亡くなって以降、父は物忘れがひどくなってしまった。地元の友達から連絡があり、時折帰って様子をみるようになった。

生前に母はよく「根は優しい人なのよ」と言っていたが、借金を作ったり、転職を繰り返して母を苦労させた父だったので、正直に母に対しても、何を言ってんだ、と思っていた。

弱々しくTVを無感情に眺める父を見る。思わずため息が溢れた。さっさと掃除をして帰ろうと思い立ち上がる。

万年床が敷いてある父の寝室兼仏間に入る。

母の仏壇を見て、違和感に気付く。

切花は先ほど差したのかと思うほど綺麗で、水も変えられており、何より埃一つ無かった。

丁寧にカスタードプリンが供えられていたので父に尋ねた。

「…好きだったからな」父は抑揚無く答えた。

母の写真を眺める。

いつか自分に向けていた、あの歯に噛んだ顔で笑っていた。

8/30/2025, 5:22:35 PM