陽月 火鎌

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君と他愛のない話をして、終わりの時を待っていた。
そんな時、君がこの壊れかけの世界に、ずっと居たいという言葉をこぼした。
だから、どうして君はこの世界にずっと居たいのか、聞いてみた。
心を読めば直ぐに分かるけど、今は。
今だけは、君の口から、彼女の思いを聞きたかったから。
少しばかり静寂が辺りを支配していたが、ぽつり、ぽつりと、君が自身の思いを話し始めた。

    *

「私が、ここにいたい理由はね、終わらせたくない…っていうより、……⸺終わりが、怖いんだよ。思い描いた通りに魔法が自由に使えて、この世界で数え切れないほど生きて、大抵のことじゃ死ななくて……そんな状態に、慣れた私が………元の世界に戻ったとき、この世界を作る前だった私に戻れるのか、わからないよ」

そっか、そうだったね。
君は、”絶対”って言葉よりも、”変わる”ことが怖かったね。
少しずつ変わるならともかく、大きく変化することが怖くて……だったらいっそ、”不変”がいいって。
だからこの世界は少しの刺激と、一度出来上がったモノは絶対に変わらない世界なんだよ。

そういえば……元の世界だった頃の、昔の君に怒られたっけ。あの時の俺は、しばらく切れていなくて腰下まで伸びていた髪を、肩口まで切って、君に会いに行ったね。
そうしたら君、俺に会ってすぐ泣きだして、「どうして私に何も言わないで勝手に髪を切ったの!」って、自分勝手に言ってて……今だから言うけどね、その時の君、とっても自分勝手で、俺は君のモノだって主張してて……ちょっとキたんだよね…///

「……⸺ふん!」

⸺痛ァっ!?
ちょっ、ちょっと!?俺の発言に怒ったのは分かったから、いきなり急所に肘打ちしないで!?

「ばーか」

いっつつ、はぁ……ごめん。

「………じゃあ、終わらせないで。私はずっと、この世界をに居たい。この世界の夢を見続けたいの」

……終わらせないことで、君に許されないとしても、俺のこの世界を終わらせるという決断は揺らがないよ。
この世界を終わらせないと、君が死んじゃうから。

「それは、そうかもね。でも…だから、許さない」

…………。

「向こうで……元の世界で、生きてる貴方が謝るまで、許さないから」

⸺!
それは……大変だな。
君が三年待っても、俺が君の前に居なきゃ、その場合の俺は、とっくの昔に死んでるだろうから、その後は好きにしなよ。

「……わかっ、た。好きに…やるよ」

ふふ、分かったらいいんだよ。
⸺もうちょっと話せそうだね…何話す?

「じゃあ……あ。色々レシピ教えて。作りたい」

あぁ、わかったよ。じゃあまずは⸺。

【この思いは、終わらない】

11/29/2024, 8:24:28 AM