リル

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!マークじゃ足りない感情

 母が京都に出張に行ってしまった。これから五日間どう過ごそうかと考えた。
 学校に行ってその帰りに何かご飯を買っていこう。朝ご飯も買っていかなきゃ。などと考えつつ電車に揺られ、五日間の一人暮らし生活が始まった。
 この五日間の食事は問題なさそうであった。しかし、買い物が難敵なのだ。私は極力、人と会うのを避けたい人間であった。レジの人と話すのもあまり好きではない。なので、五日間で買い物に行った回数は二日くらいだっただろうか。昔のことでもう忘れてしまったが、ほとんど買い物に行った記憶はない。家にあるもので、必死にしのいでいた。
 そして、五日目まで頑張った。のだが、その夕方に事件が起こった。ふと、気づいたのだ。母が麦茶を作っておいてくれたことに。ちょうど喉が渇いていたためコップに注いで勢いよく飲んだ。
 ん?何か丸っこいゼリーのようなものが歯に触った。コップにゼリーが入っていたのか。もうよく分からないが、気持ち悪かったので吐き出した。そして、そのゼリーのようなものを直視し、素手で触った。プニプニしていた…。
 変な感じがして、ヤカンの蓋を開けてみた。ゾワッとした。もう驚きを通り越して声など出るはずもなかった。そこには、プニプニのゼリーの集合体が麦茶全体に広がっていた。タピオカミルクティーか?
『ガチャ』
 玄関のドアが開く音がした。もう、嬉しくて仕方がなかった。一番最初に、このプニプニのゼリーの話をしよう!そう思った。
「これ、麦茶のカビじゃない?」
 母にそう言われた。また、ゾワッとした。
 買い物に行かなかった罰か…?

8/15/2025, 10:51:05 PM