彩竜帝 里乃亜

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お題「大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?」

 「言い天気...」
 ある日の晴天の午後、とある少年がポツリとそう呟いた。
とある木陰の下で昼寝をしようと思って寝転んでいた少年であった。
ただただ流れる雲をボーッと見つめていた彼。そこに誰かが現れた。
「ん?なんだ猫か...」
茂みから出て来たのは人懐っこそうな丸い顔した猫だった。
その猫は少年の隣に丸くなり、昼寝をし始めた。
その猫をみながら少年もゆっくり瞼を閉じて眠りについた。

 目が覚めればそこは、雲の上だった。
状況が理解できない。そう感じた少年は咄嗟に走り出した。
しばらく走るとそこにはさっき見た猫が座っていた。猫は言った。
「ようこそ。天国へ。」
少年は目を丸くし、猫に尋ねた。
「なんで、僕は天国にいるんだい!?」
猫は顔色一つ変えずに言った。
「あなたはあなたの両親に売られたのです。」
少年は腰を抜かした。そして、絶望のどん底に叩き落とされたような気になった。
自分を愛していると思っていた両親が、よりにもよって悪魔ではなく、「天使」に自分を、自分の魂を売ったという現実を知ったからだ。しかし、猫は言葉を続けた。
「あなたの両親は、お金が欲しいが為だけにあなたを売ったんです。妹さんの時も、そうでしたよ。」
驚いた。両親は自分に妹は事故に会ったと嘘を付き、天使に魂を売っていたなんて。
「ここは天国です。妹さんもいます。もう帰れませんがゆっくりしていってください。」
猫はそう言って消えていった。

少年はしばらくその場を動けなかった。
天国にこれて嬉しいという感情より、両親が自分を裏切ったという事実を受け入れられなかったからだ。
出ないはずの涙が溢れそうな気分になった。
もう二度と友達に会うことも生き返ることも不可能なのだ。

            題名 「木陰の下での物語」

5/4/2023, 1:18:11 PM