「あーん」
何気なく俺の目の前に出されるスプーン。そこにはバニラアイスクリームがちょんと乗っている。
恋人が自分の前にあるクリームソーダのアイスクリームをすくって、俺の前に差し出していた。とんでもなく眩い笑顔で。
本当に唐突だからびっくりしていると、彼女が頬を膨らませる。
「食べられませんか?」
「いや、そういう訳じゃないよ」
ここが外じゃなくて良かったと思いながら口を広げると、彼女は差し出したスプーンを口に運んでくれた。
甘いバニラが口に広がるんだけれど、いつもより美味しく感じられる。
「おいしい……」
「おいしいです?」
「うん、おいしい!」
「魔法かけましたー!」
無垢な笑顔でそう言う彼女が愛おしいくて、幸せが広がった。
おわり
三一六、小さな幸せ
3/28/2025, 2:51:52 PM