あひる

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お題「安らかな瞳」



ーなんでそんなに睨んでくるの?ー
ー君は怒られてる時もそんな態度なのかー
ーもっと愛想良くお願いねー

何度言われてきたのだろう
その度に私は深く傷ついた

「私の目って、嫌いだなあ」

鏡の前で私はため息を付いた
生まれつき目が細くて、真顔でも怒ってるように見える。
なるべく笑顔でいる事を心がけているが、笑顔もそんなに良いとは思えず、いつの間にか笑顔も少なくなっていった。

「化粧で多少は良くなるけどさあ」

私は再びため息をついた
今日は取り引き先に挨拶にいくのだが
今までも初対面の相手だとどうも感触が良くない
それもそうだ、笑顔が良い人の方が私だって好印象を覚える。
第一印象って凄く大事なんだなって改めて思った

「さてと、もう行かなきゃ」

朝事務所に挨拶に行って、すぐ先方に向かった。
今日は事務所から距離も近いし徒歩で移動だ。

「涼しくて助かるー」

夏も終わり紅葉が綺麗な季節だ
汗をかかないで済む事に少し気分を弾ませて歩いた。

「あれ?」

歩いていると目の前で女性が困っている様子が窺えた。
何やら袋が破れてなかに入ってた大量の果物を拾ってるよう。何とも色鮮やかな地面になっている。
たまにドラマやアニメで見るような展開だが、困ってる人をほっとく私ではない

「あのー大丈夫ですか?手伝いますよ!」
「あら、助かるわ、ありがとね」

近くで見て驚いた
とても美しい女性だった。顔も整ってるし全てのパーツが美しいと感じた
女優さんなんだろうか?と考えながら果物を集めていった

「これで全部ですかね?」
「そうね、本当に助かったわ。お嬢さんありがとうね」

この大量の果物1人で食べるのかな、とか思いつつも感謝の言葉に頬が緩んだ

「とても可愛らしいお嬢さんね、特に目が綺麗で良いわ」
「いえ、そんな、私は全然」

女性の言葉に咄嗟に両手で否定した

「そんな事ないわよ、貴方の瞳ってなんだか優しい感じがするの。現に1番に私を助けてくれたでしょ」
「いえ、それはたまたま、困ってる人が見えたので…」
「ふふ、照れなくても良いのよ。あ、これお礼に差し上げるわね。お仕事頑張って」

女性は手に持っていた林檎を私の手に包ませた。
赤みが綺麗で大きな林檎だった

「あ、ありがとうございます」

私のお礼を聞いて
女性は笑顔で軽く会釈をして遠ざかっていった。

「綺麗な女性だったな」

私は少し赤らんだ
女性が美しかったのもあるのだか、私の目をほめてくれたのがとても嬉しかった
お世辞だったかもしれないけどと思いながらも、嬉しさが溢れて頬が緩んでしまう。

「さあ、早く先方に会いに行かなきゃ」

揚々とした気分になり、私の足はいつもより早まった。


3/15/2023, 7:55:11 AM