汚水藻野

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 キキーと切なげに鳴るブレーキ音は、私たちの別れを意味するようで、悲しかった。
 はず、だったが。

 「終電……なくなっちゃったね………」

 どっかで聞いたことのある台詞を吐かれた。

 「いや…まさか此処でそれを聞くとは」
 「ねえ、どうする……?」
 本当にどうするべきなんだこの状況。
 隣にいる方は日本を知らない。もちろん俺もほぼ知らない。終電がなくなったらまず最初に寝床の確保が必要だが、もし野宿となった場合申し訳無さが込み上げる。どうしたらいいんだ俺は。
 「…ね、ハグして」
 「いいですよ。……いやダメです」
 「えー…」
 つい癖で許してしまいそうになったが、堪えた。
 「というか、もう力は無いのですからする必要ないのでは?」
 「でもあなた、『ずっとそばにいます』って言ってくれたわよね?」
 「…それは、」
 「執事っぽい口調もやめてって言った気がするんだけど」
 「………う……」
 口ではもう勝てない気がする。そう思いながら腕を広げて待った。嬉しそうに飛び込んでくる彼女を、「もしかしたらこの子が世界を救うのでは」と思わざるを得なかった。

 「……仕方ない、今日は帰らずあっちに寄って泊まらせてもらおう」
 「ええ」
 右手の義手で指す方向には、日本で今一番頑丈な建物があった。

#2024.8.10.「終点」

 annaに言って欲しかった。そんでjurioの反応が見たかった。やっぱ執事口調は抜けねーよなあ…。

8/10/2024, 9:54:14 PM