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 スマホの画面を無感動に親指で連打する。
 タタタタタタタタタ……溜息。
 タタタタタタタタタタタタタ、タッチャリーン……タ、タ、タタタタタタタタタ。
 ひたすら流れ続けるゲームサウンドと効果音にも次第に募っていく喧しいという感情。けれどもサウンド調整をするのも手間でサイドスイッチでミュートにする。
 そうなると部屋に響くのは画面をひたすらタップし続ける音と溜息。そして偶に外を走る車やバイクの音。
 大きな音のない部屋はじわじわとメンタルを蝕む。
 視線が集中する画面の上部には無惨な課金の末路が踊っている。
「……あと、五十連……」
 五桁になる課金をしたところで確定で得られるものではない。そんなあっさりとした、けれどずっしりと胃に来るような重さに、漏れ出そうになる本音を堪えて唇を噛む。
 たったの五つの音だが、それを言葉にしてしまうと、かけた金額も時間も全てが無意味で無価値なものになってしまう。それが恐ろしくて、胸にあるその気持ちを音にすることはできなかった。
「……。乱数調整しよう。育成が大成功続いてからやろう。それから、ジンクスの画像をホーム画面に設定して……コンビニで画像もプリントして、そうだ触媒。関連書籍と聖地の写真集。あと神社に行って御守り用意しよう。それから関連グッズ。五十連あるからいける、いける。絶対出る」
 洗脳するように言い聞かせる。根拠のない自信で支えないと、今にも痩せほそった心はぽっきりと折れてしまいそうだった。
 それでも他人がその姿を見たらなんと言うか。そんな囁きがぐるぐると、ぐるぐるとずっと渦巻いて消えなかった。

3/22/2023, 5:36:05 PM