貧しい恋人たちがいた。クリスマスの夜、彼らは食べ物でも服でもなく、聖なる夜にふさわしい、真っ赤なポインセチアを買う。
ふたりは凍えて飢え死にそうになりながら、自分たちに不釣り合いなほど立派なポインセチアにうっとりとして、温かな微笑みをかわしあうのだ。
そんな物語をどこかで読んだことがある。
愛があるというだけではいずれ死んでしまうだろうと、その時思った。
どれだけ恋人を想う清らかな心を持っていたとしても、ポインセチアだけで真冬の夜を越えられるわけがなく、生きていくことはできないのだ。
でも、彼らにとって、クリスマスの夜にポインセチアのない人生など、生きている意味がないに等しいものなんだろう。
それに、白い聖夜にひっそりと燃える深紅の花びらのあたたかさを知るのは、きっと彼らしかいない。
5/16/2023, 3:11:43 PM