そっとコントローラーを床に置いた。
今まであぐらをかいてゲームをしていた。
猫背矯正の全くしていない性格で、学校もバイトも行っていない。服も何日も洗っていない。よたよたになったパジャマを着ていた。かつてこの服は私服だった。それも高いタイプの。
昔販売していたゲームコントローラーを使っていた。
接続先はPC、昔はテレビに接続していただろう。
FPSゲームというもので、オンライン上でプレイヤーと銃で撃ち合うバトルロイヤル形式。勝ち残り形式。
舞台も荒廃したけれども、どこか人が住んでいたような感じ。稼働はしていないがどこかスチームパンク感の残る工場跡、自然の残る湿地帯、火山、遺跡、町、市街地。
プレイをする時間帯は、夜中が多かった。
これはサーバーの問題だ。このゲームのサーバーは外国にあるため、日本時間にやっても過疎っていて話にならない。
彼は人を殺すためにゲームをしているわけであって、生活習慣病対策のためやストレス発散のためではない。
日々是、鍛錬あるのみである。
目を酷使してまで、じっと身を潜めている。
撃たれたら終わり、撃たれたら……
それで彼は上位まで勝ち残り、ランクポイントを稼ぐ。そのつもりで貴重な2年間を反故にした。
「あー、またダメ……」
ゲーム発売当初は上位ランクの常連になっていた。今はもう、「あの頃は今」だ。プロチームや海外勢による化け物たちの共食い加減が激しすぎて、彼くらいの実力では「喰われて」しまう側なのだ。
今シーズンも難しそうだな……。
カレンダーを見て、日付を確認した。
彼は大学3年生。今は2025/01/15。
就活なんてしたくない、と再びコントローラーを掴む。それで逃避の夜更かしをする。試合結果はマイナスに終わった。
1/15/2025, 9:21:39 AM