《水の中で息をする様に》
(刀剣乱舞/三日月宗近)
その日、内番で小狐丸と畑当番だった三日月は、夕立に遭い、咄嗟に納屋に逃げ込んだ。
「参りましたねぇ....」
「困ったものだなぁ、ははは」
雨は激しく降り、当分止みそうに無い。
三日月は小狐丸と顔を見合せ、苦笑いをする。
「こうも降り続けると、まるで水の中に居るようではないか?」
「三日月殿は面白いことをおっしゃいますな」
「水の匂いに満たされる気持ちだ」
「音も相まって雨と一体化しているよう、と言ったところですかな?」
三日月は、そうだな。と笑い返す。
確かに傍から見れば雨という空模様は気が滅入るものではある。
が、雨だからこその空気や言葉がこの世にはある。
三日月は雨も、晴れも、雪も。四季折々の花々と、空模様が愛おしく、その季節、景色を指す言葉もこの国には多くある。
梅雨に限って言えば、五月雨、卯の花腐し、男梅雨、女梅雨。
琉球の刀達は「すーまんぼーすー」とも呼んでいた。
「とはいえ、いつまでもこのままというのは困ったな」
「ならば、いっそ本丸まで走りますか?」
「どちらが先に着くか競ってみるか?」
「負けませぬよ?」
2振りは短刀のように笑い、雨の中を走り出した。
8/19/2024, 12:12:52 PM