哀愁を誘う
もう何年も前のことだけどさ、うつむいて歩いてたらね、あんたの名前で呼び止められたんだよ。数学の西先生にさ。覚えてる?公式とかなんでも歌にしちゃう先生。
そうそう、それで先生が言ったわけ。「下向いてたから、あいつと勘違いしたー」って。そんとき私思ったんだよ。うん、なんかさ。
あんたって馬鹿だよなあ。
私、あんたのこと好きよ。おもしろいし楽しいし、かわいいし。けどあんたはいっつも下ばっか見てさ、顔も隠したがるし、哀愁?みたいなの漂わせて。背中がすんごい寂しげなわけ。
でもそういうのも、あんたのいいとこだよ。変な虚勢も見栄も張らないし、自分です!つって貫いてる感?そういうとこも好き。
あーなんか照れるな。けど夢の中でもなきゃあ、こんなん言えんでしょ。
あんたのこと、愛してるよ。ほんと出会えてよかった。一生の友達。親友。……お別れなんて、やだなあ。
……なんつって。
うん、もういっかな。全部言えた、悔いはない。
ほんじゃ、私そろそろ行くわ。あんたは来んなよバーカ。そうやって哀愁ちらつかせながら、ずっとそこにいなさいよ。
生きててよ。
それじゃーね。ま、これから背中向けるけど、あんたの目に私の後ろ姿が寂しそうに映ってたら、それは光栄だわ。
ばいばい。
11/4/2024, 3:54:18 PM