ミナ

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「全然、分からない…」

通勤途中にあるカフェの一角で彼女は頭を抱えた。
眼の前のテーブルにはノートパソコンと、分厚い参考書が開いて置いてある。
そのページは少ししか進んでいない。

彼女はこの春の人事異動で、デザイン部から情報システム部に異動になった。
配属されて最初に言われたのが資格を取ることだった。

「レベル1は簡単すぎて誰でも受かるから、レベル2を目指そうか」

先輩の鶴の一声で決まったけれど、いざ勉強を初めてみるとさっぱり理解できない。
ガッツリ文系の自覚があるし、理系資格というだけで乗り越えられない壁のような抵抗感があって、テキストを数行読むだけで眠くなってしまう。

―もしかして、畑違いの部署に異動させて自主退職を促すという別バージョンのリストラなのかな…。

新しい仕事を覚えながら取り組む久々の受験勉強は、彼女を徐々に追い詰めているようで。
あり得ない妄想まで浮かぶようになってしまった。

―まあ、先輩も教えてくれるって言ってたし、もう少し頑張ってみるか。

新手のリストラでは無いことを祈りつつ、勉強を再開する。

彼女の勉強漬けの日々は、まだしばらく続きそうである。

#逃れられない

5/23/2024, 11:51:11 PM