今日のテーマ
《狭い部屋》
実家を出て一人暮らしを始めた俺が住むことになったのは大学から程近いワンルームマンション。
必要最低限の家具も設置されてるから持ち込んだ荷物はそう多くない。
服に小物に食器類、あとは授業で使うノートパソコンと本が数冊。
大して荷物もないせいか、実家の部屋と同じ6畳とは思えないくらい広く感じた。
月日が流れ、物も増え、気づけばだいぶ手狭になった我が家。
それを更に手狭にしているのが、半年前にできた彼女の存在。
同棲しているわけではないが、いつの頃からか週の半分ほどは入り浸るようになっていて、そろそろ半同棲と言っても過言じゃない。
今もレポートに明け暮れる俺をよそに、我が物顔で俺のベッドを占拠して、俺が買ってきた漫画を読んでる。
視界の端でゆらゆら揺れる色白の素足。
気が散らないと言えば嘘になる。
レポートなんか放り出して、俺もゴロゴロしながら漫画を読んだりダラダラしたい。
「ねえ」
「んー?」
「お昼、何食べたい?」
「うどん」
「暑くない?」
「じゃあ冷やしぶっかけうどん」
「りょーかーい」
煮詰まってイライラし始めたのを察したのか、彼女が間延びした声で聞いてきた。
どうやら昼飯は作ってもらえるらしい。
読んでた漫画をぱたりと閉じて、彼女はベッドから降りるとキッチンに向かう。
冷蔵庫を開ける音、レンジの稼働音、シンクを水が叩く音。
人の気配と生活音が途切れていた集中力を引き戻す。
昼飯ができあがるまでにあともう少し進めてしまおう。
レポートの傍ら、いつか広い部屋に引っ越して、彼女と暮らす未来を夢想する。
できることなら家族として、共に暮らしていけたらと。
遠い未来を夢に見ながら、今はこの狭い部屋のそこここに感じる彼女の存在を味わおう。
手を伸ばせばすぐ届く距離に愛しい人がいる幸せを噛み締めて。
6/5/2023, 5:24:48 AM